2011年9月

株式会社レイテック

外国G 田畑昌男

 

中国特許情報年次会(PIAC)2011視察ツアー報告

 

日程:2011年9月4日(日)〜8日(木)

見学・訪問先:中国特許情報コンファレンス(PIAC)

          国家知識産権出版社、康信特許事務所、国家知識産権局、JETRO北京代表処

 

2011年09月5日と6日の二日間に亘り、北京で中国の特許情報フェアにあたる「中国特許情報年次会2011(PIAC(Patent Information Annual Conference of China)2011)」が国家知識産権局(中国特許庁)の主催で開催され(写真1)、レイテックでは昨年の第1回会議と同様出展を行うと共に、外部有識者の方々(※)と弊社スタッフが視察ツアーを組んで視察、知財情報関連機関の訪問を行いましたので、概略をご紹介いたします。

  ※桐山勉様(日本特許情報機構・研究所)、都筑泉様(大阪工業大学)、鶴見隆様(戦略データベース研究所)、中村栄様(旭化成)(順不同)

 

1.PIAC

1)全般概要

PIACは、講演会が主で、講演会場の周りに特許情報関連企業のブースが設置されていた。

・講演は、5日(月)、6日(火)とも中国や日本の政府機関関係者による20分間の基調講演・国際動向講演と、企業による特許情報の活用(アプリケーションとサービス)に関する20分間の講演、出展各社による10分間の企業プレゼンがなされ、6日の午後は特定テーマについての1〜2時間程度のワークショップが開かれた。

・出展者のブースも50ほどあったが、日本の特許情報フェアの規模と比べまだまだ小さなものであった。出展企業は、中国内外の特許事務所や特許調査会社である。

・講演テーマや、出展内容は、特許調査や特許解析、特許検索システム、技術移転、権利活用等々多岐にわたるものであった。

・中国の特許情報フェア全般を通じて、特許出願件数の増大著しい中国において、中国企業自身が特許情報の活用についても注目し、中国企業の中にも特許情報関連企業が育ち始めると共に、海外企業がこれまでの経験を生かして中国で特許情報の調査、解析、権利活用等の事業展開を急速に進めている様子を感じることができた。

 

2)年次会1日目(9月5日)

<基調講演/国際動向>

1)情報の伝搬と活用を促進する特許制度発展(宋建貨知識産権局条約司司長):専利法制定/改正経緯、三次改正法のポイント紹介。

2)経済貿易分野におけるIPR保護(楊国貨商務部条約法律司副司長):IPR保護促進のための多国間・2国間の交渉状況の紹介。

3)知識産権創造と応用の国際動向‐2種の新興市場の興隆(張平北京大学知識産権学院常務副院長):中国は特許情報の利用についてこれから先進国を追いかける立場であることを念頭に、米国企業のビジネスモデルを参考にすべきことや特許サービス機構の利用、ライセンスに際しての特許評価機構利用の重要性を説かれた。

・知識産権制度の本質は独占を認めるもので、市場経済のもとで、競争と革新なくして機能し得ない。

・企業の知財戦略は、発達した経済市場において、市場競争者に導かれる。知財戦略は、大学における基礎研究とは区別されるべきものである。(産学分業)

・米国企業のビジネスモデルを参考にすべである。中国の現状は、産学連携は少ない、特許情報の蓄積は初期段階、キーテクノロジーのライセンスは少ない。

・特許情報サービス機構の利用、ライセンス(特許技術評価)サービスを利用すべきである。

4)企業創新発展と米国特許体系(Randall Rader米国連邦巡回区控訴裁判所首席裁判官):

他国や他企業から学ぶことの重要性を説かれた(マイクロソフトは、他国や他企業から学んだ)。

・米国特許法では、発明、実用新案、意匠出願に権利を付与し、種々の植物や食品を含むカテゴリーの発明をカバーしている。

・米国特許法改正のポイント:@先願主義、A5極の調和、情報開示を完全・適時に行う、B特許情報を効率的に公開。

5)日本の特許政策における対中小企業発展促進作用(山本英一日本特許庁総務部普及支援課特許情報企画室課長補佐):IPDLについて説明され、多言語(中国語、韓国語等)クロスサーチシステム等JPOのITインフラの将来ビジョンを紹介情報サービス市場が成長していることを紹介された。

 

<アプリケーションとサービス(特許情報の活用)>

 発表企業名:テーマ

1)三一重工:特許創造をアシストする特許情報

1989年設立された従業員6万人超の建設機器メーカーの特許情報を活用して発明を創造し、企業を発展させた成功談。特許情報検索システムを社内に構築し、知財部門を設け、社内研修、特許報奨を充実させた。

2)IPPH(知識産権出版社)特許創造における特許情報の活用法

・特許創造の強化を目指す企業の技術革新活動の全ての過程で特許情報は活用される(特許出願増大、特許の質の強化、特許分布(landscape)の改善)。

・特許活用の場面:テーマ設定・リサーチ、研究開発、技術応用・特許アレンジ。活用の各場面での具体例紹介。

3)NGB:特許調査法

・特許調査の種類、特許調査プロセス、有効性調査の説明のほか、次の点が強調された。

・日本特許調査の有用性(蓄積が多いので、有効性調査において有用。一例として羽根なし扇風機技術)。中国特許調査の困難性(特実の数が膨大、言語、20年期間)。

4)トムソン ロイター:IPによるイノベーションの加速

  ・中国内外で特許紛争や特許の売買が報道されている。出願増等を背景に中国特許の重要性が増している。

・産業分野別特許動向の例として、自動車産業、医薬品産業を解析例紹介。

5)フィネガン法律事務所:企業の特許管理おける特許情報の活用

・訴訟等権利行使場面や、ビジネス協定(ライセンス/クロスライセンス、M&A、協力−共同開発、合弁、融資等)段階での特許情報の活用の紹介。

・世界市場におけるパテントポートフォリオ価値の利用(IBMの例、損害賠償額トップ10の訴訟リスト、パテントトロールの勝訴率等)。

6)インテレクチャル ベンチャーズ:特許の投資と商業化

・技術から直接お金が生まれるわけではない。その間にポートフォリオが必要(シナジー効果)。一つの技術、一つのライセンスでは何もできない。特許評価の要素は、法律と製品市場。

7)CAS:先端検索技術を使用した医薬IPの発見

・CASの紹介、医薬発見における特許解析例の紹介、STN利用企業名紹介。

・CAプラス(科学文献データベース)で、急速に増大する医薬分野の先行技術に容易にアクセスできる。

・STN(サーチプロダクト)は、関連特許情報を正確に取得する強力なツール。

STN AnaVist(解析/ビジュアル化ソフト)は、技術動向の正確な解釈や、医薬開発のリーディングカンパニーの特定、関連技術の位置付けによってビジネスデシジョンを促進する。

8)Syngenta(先正達公司):世界各地で農作物等の研究を行っている会社によるリーディング・グローバル・カンパニーの成功のための特許情報の重要な役割についての紹介。   

 

<出展企業プレゼン>

各社のサービス内容の紹介では、レイテックの他、知識産権出版社、STN、日本技術貿等中国内外13社から企業からプレゼンがなされた。

・IPPH(知識産権出版社):提供商品・サービスの紹介;CNIPR特許情報サービス、特許情報解析、意匠調査システム、調査新手法(キーワード検索、国語―日本語機械翻訳システム)、新製品のR&D(知財関連情報とコンサルティングサービス、TRIZ)。

・STN:特許や非特許文献の検索に200近くのデータベースを利用できる。

・プロパティ:知的財産のコンサルテーションや分析の経験が豊富であることをアピール。

・クエステル:アジア各地に幅広く拠点を設置、オービットを改善、世界中に顧客。

・トムソン ロイター:ビジネスや専門家向けの情報提供会社。特許情報解析の紹介。

・NGB:日本特許の先行技術としての重要性(蓄積量、言語の壁、詳細な特許分類)の紹介。

・レイテック:鶴見隆前東京農工大学教授により、旭化成株式会社様が弊社の特許解析システムPAT-LISTを利用して構築された社内のローカルデータベース(LDB)、戦略データベース(SDB)の活用により成果を上げておられる事例の紹介(写真2)。

・ダーウエイ ソフト:権利管理、分析、検索、提案評価、事務管理、警告管理のシステム紹介。

 

<歓迎晩餐会>

・特許情報年次会参加者代表は、晩餐会に招待され、会場では生演奏の音楽が流れる中、和やかな雰囲気で参加者同士の情報交換が行われた(写真3、4)。

 

2)年次会2日目(9月6日)

<基調講演>

1)知的財産権と技術の標準(韓俊工業情報化部科技司副司長):中国が技術の標準化においては発展途上国であることを認識しつつ、知財戦略、技術標準戦略を進めていくことを表明。

2)中国における知的財産権保護の新展開(金最高人民法院知財審判廷副廷長): 特許訴訟の増大と裁判所の取組の紹介、知財情報を意識する必要性を説明。

3)知識産権投融資サービスと中小企業発展(雷国家知識産権局特許管理司副司長)

4)日本企業の特許創造能力改善によるビジネス戦略の発展(田浪和生大阪工大教授):インクジェットプリンタ例にしてキヤノン株式会社様において特許情報を重要視し如何に特許創造能力を高めてビジネス戦略を促進しておられるかを紹介。

 

<出展企業プレゼン>

午前中の残りの時間で、WIPS等7社の企業プレゼンが行われた。

・WIPS:2012年発売予定のワールドワイド特許調査、オンライン特許解析システムの紹介。

・イーストリンデン:医薬分野の特許調査データベースの紹介。

 

<ワークショップ>

午後は、10のブースでワークショップが開かれた。

 テーマとしては、特許情報の分析実例や知財裁判実務、企業特許警告実務、侵害防止調査実務、インド特許調査等であり、企業プレゼンは10分程度と細切れの紹介にとどまっていたが、ワークショップにおいては、特定テーマについてのより詳細で具体的な説明がなされた。

・知識産権判例と実務(最高人民法院裁判官)

・専利情報分析実例(IPPH)

・企業特許警告実務(IPPH,プロパティ、Evalueserve)

・ダーウェントの価値―36特許庁の信頼(トムソン ロイター)、分析の応用(トムソン ロイター)、国際市場において競争優位を獲得するためのIPRの十分な利用(電子科技大学)

・中国における技術移転(Transpacific IP)

・侵害防止調査の理論と実務(三友特許)

・特許調査と分析の向上のための技巧とツール(SAS)

PATENTSCOPE,検索と分析の強力なツール(WIPO)

TotalPatentの特徴と実務応用(レクシス ネクシス)

PatSnap-ユーザーフレンドリーな特許検索・分析システム(PatSnap)

・プロパティ ワークショップ

・特許専門家の選択(STN)

 

<主な日系出展企業>

 レイテック、プロパティ、日立技術情報、富士通、NGB、東芝ソリューション、太陽国際特許、JPDS


2.知財情報関連機関

(1)中国国家知識産権出版社(IPPH)

日時:2011年9月7日午前

1)出版社の知財コンサルティングの内容:検索、分析、加工、索引等。

2)調 査:調査目的、使用DB;侵害防止調査を行ったことはあるが、多くはない。多いのは、出願前調査。CNIPRのDBと分析ツールを使用。

 ・依頼が多い国;日本、欧州(オーストラリア)。

  ・技術分野;国内は、機械や新エネ(太陽電池他)。海外は、生物、バイオ関係が多い。海外から医薬関係の依頼があるが、国内からは食品でもなく医薬でもないものの依頼がある。

  ・調査依頼方法;日本語のe−mailでも良い。出版社で検索式を立てることもできる。

  ・納期;侵害防止調査で2〜4週間。

3)中国で特許分析を行う際の最適なツール:国内企業は出版社のシステムを一番利用している。

4)検索システム

  ・TIFしかないわけではない。一部PDF化されている。いずれPDFにしたい(時期不明)。

  ・ワールドワイドに収納しているデータのソース;各国特許庁から中国特許庁に提供されたデータ。

  ・死亡特許/有効特許の検索ができるよう検討中。

  ・同意語辞書を作っている。選択した場合に辞書を生かす。

  ・企業の管理コード;1出願人が過去に20件以上の出願をしている場合、管理コードを付けている。同じ会社が違う漢字を使っているかどうか、グループ企業かどうか出版社の基準で表示しているが、ユーザーの観点で削除可能。

  ・出願人名の変更があった場合、遡及して対応;1年に1回コードを付与し直している。

 ・中国特許庁のDBと将来統合の可能性;将来入り組んだ状態になることはあっても、統合されることはない。出版社は商業ベースで事業を行っており、戻ることはない。システム開発も別々の会社。

・データ更新時の検索スピードは、従来よりもなるべく速くしたい。中国国内にサーバーを置くと、外国からの利用は遅くなる。日本にサーバーを置くことを検討している。

・中国の出願電子化率は50%位。

・出版社のデータの版権はどこにあるか;知識産権出版社が知識産権局から公開の権利等すべての権利を受けている。データの権利も保有している。

・CNIPRはタイムラグがないが、商用データベースでは、出版社からのデータ提供時期の関係でタイムラグが生じている。短くするかどうかは、検索部門ではなく、、営業部門の担当事項。

・CNIPRの英文が機械翻訳でなくなる時期:毎週水曜日にデータの更新を行っており、タイトル・要約はマニュアル翻訳が出来ているものは、差し替える。全文マニュアルが出来ているものは、オンライン利用の都度全文マニュアルに変更している。

・前処理;分厚い手引書に従って行っているが、内容は企業秘密。

・外国向け操作説明会を検討中。

・CNIPRはアクセスは、国内が95%。英文や、日本語での利用が増えて来ている。

・改善要望は中国国内からが多いと思うが、営業部門でないので詳細不明。

5)出版社内見学

上述の出版社の事業についての説明を受けた後、出版社内の執務室を見学させて頂いた(写

5)。

 

 

(2)康信国際特許事務所

日時:2011年9月7日午後                         (写真6)

 

1)5年ほど前と比較した場合の特許調査の目的の最近の傾向;侵害防止調査が5年前と比べ著しく増加している。輸出前に侵害回避策をとるためである。多くの企業が実施しているというわけではない。ある程度の規模の企業に限られる。

・技術主題調査(技術動向調査)も行われている。

・出願前調査は、中国企業からの依頼で行っている。企業内部で行うところもある(4〜5年前と変わった)。

・無効調査・侵害防止調査は、外部機関を利用するところが多い。

・以前は出願前調査や技術動向調査が多かったが、最近では侵害調査が増えている。侵害調査では調査漏れがないように特に気を使う。調査が終了した段階で国内企業には直接アドバイスを行い、外国企業には現地の弁護士・弁理士と連携してアドバイスする。

2)企業内でのデータベースの利用:大手企業は意識して充実している。トムソンのソフト利用が多い。出願件数が多ければ政府からの優遇措置があり、それほど近い技術がない場合、出願する傾向がある。 

3)国内企業と海外企業の傾向;国内企業からは侵害性調査多い。海外企業からは、中国に進出してくる時の調査がある。

4)調査ツール;国内特許ではCNIPR。トムソンは利用料金は高いが、使いやすい。CNIPRは企業よりも事務所で多く利用されている。大手企業では社内でデータベースを構築しているところもある。

5)解析ソフト;台湾の会社が開発したソフトがある。トムソンにも解析ソフトがある。

中国製ソフトも2〜3年検討したが、外国文献はトムソンより弱い。CNIPRもある。中国製は価格が安いので、安さを重視する企業が利用。

・一般企業では解析ソフトはあまり利用されていない。

・日本の会社で研究者が解析ソフトを利用できるようにしているところがあるとのことであるが、中国では例はないと思う。大手企業の知財部門での利用はある。

5)専門のサーチャー;大手企業でもごく少ない。一般的に、先行技術調査は研究所や知財部門で行う。

社内でのサーチャーの育成・指導は、内部のメニューに従って行う。内部に審査官経験者がいる。外部のセミナーも利用。中国国内で有名なサーチャーの勉強会は、弁理士協会のもの。

6)グローバル戦略部門;他国の技術動向等色々な情報を企業に提供。中国企業はPCTやパリルートについての情報も必要になってきた。特許事務所であるから、特許関連情報に限られ、マーケット情報は含まれない。

 

 

(3)中国国家知識産権局

日時:2011年9月7日午後                       (写真7、8)

 

 パソコンを設置し、一般利用者に解放されている検索室と、特許調査の講習を行う研修室を見学。

 

 

(4)日本貿易振興機構(JETRO)北京代表処 知的財産部

日時:2011年9月8日午前                        (写真9)

 

 中国は上から統制して物事を進める社会主義経済体制時代の体質が残っている面もあり、中国でビジネスを進めるに当たっては中国の政府機関等との連携が必要であるとのアドバイスを頂き、また中国に進出した日本企業が直面する留意事項等について知財問題に限らず幅広く意見交換を行った。

 

以上


 

 

 
                                        

 

 

 

 

 

 

 


 (写真1)会場となった国家会議センター     (写真2)鶴見前東京農工大教授のご講演

   

 

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 


 (写真3)歓迎晩餐会会場             (写真4)歓迎晩餐会会場

 

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 


(写真5)中国国家知識産権出版社の執務室     (写真6)康信国際特許事務所 

 

 

 (写真7)中国国家知識産権局           (写真8)中国国家知識産権局の検索室

 

 

 

 

(写真9)JETRO北京代表処